【愛の◯◯】冬はいい季節だ

大学院にも受かったし、

卒業論文も提出した。

 

院進するけど、大学生生活も、ひと段落。 

 

早朝

 

「あっ流(ながる)さん、おはようございます」

「おはよう、愛ちゃん。

 もう朝ごはんの支度かい、早いね。

 12月30日なんだから、もうちょっとゆっくりしてもいいと思うんだけど」

「からだに勝手にスイッチが入るんです。

 年末年始だからといって、体内時計狂わせたくないので」

 

(^_^;)強いなあ、この子は。 

 

「でも旅行の疲れとか、残ってるだろうに」

「ぜんぜん♫」

「…それは、よかった。

 旅行は、どうだった?」

「とっても楽しかったです!!」

「奈良に泊まったんだよね」

「はい、わたしすっかり奈良の街が気に入っちゃって、また行きたいですねーー大学生になってからでも」

 

そういや、旅行らしい旅行、しなかったな、

大学生になってからは。

 

周りは、海外旅行するヤツが何人もいたけど。

卒業旅行のことも、頭にはなかった。 

 

「流さんは、彼女さんと旅行に行ったりしないんですか?」

 

Σ(・・;) 

 

「そういえばしないなあ。

 お互い、出不精なんだ。」

「そうですかあ。

 

 それもまた、素敵だと思いますよ。」

「す、ステキ!? どこが」

「ことばが足りませんでした。素敵『な関係』だな、って」

「(^_^;)はは…w うれしいな、そう言ってもらえると」

 

 

「ところでーー、

 流さんは、今年度で大学卒業なんですよね」

「うん、卒業見込みだよ。単位が足りちゃったし、卒論も出しちゃったし」

「名残惜しそう…」

「だけどあんま今後も変わらないよ。同じ大学の院に行くんだから」

「大学院生になるんですね」

修士だね」

 

「わたし、流さんの卒論が気になるんですけど、どんなテーマで書いたか、教えてもらってもいいですか」

「あー、

 僕はね、小説を書いて、それを卒論の代わりにしたんだ」

えーーっ!! すごいじゃないですか!!!

「すごくはないよ、素人に毛が生えたものしか書けなかったし」

「何枚書いたんですか?」

「80枚」

「すごいですよ、わたし小説なんて、書こうとしても8枚も書けませんよ」

「(^_^;;)……かえって、ショートショートのほうが書きにくいよ」

 

「それはぜひ読みたいですね、小説」

「じつはちょっと恥ずかしいんだ、愛ちゃんに見せるのは」

「なんでですか?」

「アツマに見せるんだったら、恥ずかしくないんだけど…」

「ダメ出しが怖いんですねw」

ふ、フランクだね、きみは

「でも、小説家志望なんでしょう? 読んでくれるひとは多いほうが」

「それはわかってるんだけど、わかってるんだけど………ね」

「じゃあ彼女さんにいちばん最初に読んでもらいましょう。

 それだったらダメ出しも怖くないでしょ」

「なるほど」

「そして、そのあとで邸(ウチ)の全員が回し読みする、という流れで」

「(-_-;)恐ろしいなあそれは」

 

「大学院でなにするんですか?」

「ああ、いまの学科が文芸科だから、その延長線上みたいなもんだよ」

「でもいまどき『ぶんげーじゃーなりずむ』的なものって、世知辛いですよねぇ」

「そうね…(苦笑)」

 

「新人賞に応募したらいいのに」

「ああ、するつもりだよ。

 卒業制作といえば卒業制作だったけど、80枚書いたことで、なんとなく自信もついた。

 今までは、あれこれ自分に言い訳して、書きあぐねてたけど」

「応募するとしたら純文学系ですか?」

「かなぁ」

「ーー『純文学』って、いったいなんなんでしょうね」

「な、なんなんだろうかw」

「そもそも『純文学』ってだれが名付けたんでしょうか」

「それ講義で習った気がするなあ」

「(目を輝かせて)エッ知ってるんですか流さん!?

「ご、ごめん、記憶が薄れてしまっていて」

「(途端にしおれて)………」

「が、ガッカリさせちゃったね」

「……朝ごはん食べれば、流さんの記憶も戻ってくると思います」

「……食器出そうか、僕が」

「ありがとうございます」

 

・朝食後

 

「アツマ、風呂掃除はいつからはじめようか」

「9時半」

「わかった。

 時間かかりそうだな、『風呂』というよりは『浴場』の掃除か」

「広くてデカいほうが、掃除のし甲斐(がい)もあるってもんよ」

「疲れるけどね…w」

「何いってんの流さん、疲れるのは悪いことじゃない、むしろ良いことなんだって」

「いえてるな」

「だってそうでしょ」

「ほんとだな」

「からだ動かすの好きなんだよ、だからプール掃除とかも大好きだった」

「たしかに、プール掃除には楽しみもあった」

 

「流さん脱衣所やってよ、おれは浴槽ゴシゴシしたいからさ」

 

脱衣所………」

 

「ど、どうしたん流さん!? なんか固まってんぞ」

 

「う…うん、脱衣所ね。

 

 ところで今年もあと2日しかないよね」

「なんだよそのアクロバティックな話の方向転換」

「いや……今年もいろいろあったよね、って」

 

(きょとんとするアツマ)

 

 

 

 

bakhtin19880823.hatenadiary.jp

 

(-_-;;;)言えるわけないなー、

愛ちゃんと、脱衣所で、

↑みたいなことがあったなんて。

 

思わず、湿気のせい、にしたくなっちゃうけど。

 

…その点、冬は、ジメジメしてなくて、いい季節だ。