【愛の◯◯】戸部くんの意気地(いくじ)がない依頼

今にはじまったことじゃない。

 

むかしから、一目惚れは多かった。

 

 

ーー時田さん、か。 

 

大学構内を歩いていた

 

ゴツン

 

ひゃああ!! ぶつかっちゃった!!

 時田さんごめんなさいっ」

 

「(目を丸くして)トキタさんってだれだよ」

 

眼の前にいるのは、時田さんじゃなかった。

 

わたし、戸部くんとぶつかったんだ。

 

なんでもないのっ、無意識のうちに

 

「顔真っ赤だぞ」

 

忘れて

 

「(しょうがないなあ、というふうに笑って)

 ーーわかったよ。

 

 ところでーー」

 

「ところで?」

 

おれにつきあってくれないか、星崎」

 

 

 

「なに…いってんの…わけがわからないよ……戸部くん」

 

 

 

「アホか星崎、『助詞』が違うだろ、『助詞』が」

「じょし???」

「だーかーらー、

 おれ『』つきあってくれ、って言ったんじゃねーんだよ。

 おれ『』つきあってくれ、って言ったんだよ。

 

 明日の昼から、ついてきてほしいところがあるんだけど。

 

 断じてデートとか、そういうのじゃないから、女の人がもうひとり来るから」

 

「……まぎらわしいの、ヤダ」

 

「(スマホの画面を見せて)こんな店がオープンしたんだと。

 星崎、こういう雰囲気のとこ、好きじゃないかなあと思って」

「うん、好き」

「おごるよ」

 

(ノ≧∀)ノほんとに!? ここのモールしばらく行ってなかったんだ~!!

 行く行く行く!!!

 

 

「(^_^;)……。

 

 じつは、なぐさめてほしい人がいるんだ」

「もうひとり来るってひと?」

「そう。おれらよりひとつ年上の、メイドさん…なのかな」

「戸部くんどういう人脈があるの」

 

「それになぐさめるって言ったってわたし初対面よ」

「わかってる…おれもなぐさめるから」

「ははぁ」

「なんだよ」

「そのメイドさんとふたりきりだと、危険だから、もうひとり女の子がほしかったんだ」

「ふたりきりだと誤解されるだろっ。

 それに平日動ける人間は限られてたから…」

「戸部くんもいくじなしねえ~w」

「…もう一度訊くけどトキタさんってだれだよ。答えられなきゃ、おまえもいくじなしだぞっ」

(*'д';c彡☆))Д´)パーン