【愛の◯◯】抱かれるのと、抱くのと、どっちが先だった?

わたし、香織。

文芸部の、部長。

でも、

もうすぐ、卒業。 

 

 

「香織センパ~イ!」

「あ、羽田さん」

「珍しくないですか、センパイがガーデンにいるなんて」

「そんなことないよぉーw

 

 ただ、ちょっと…ね」

 

「ど、どうして黄昏(たそが)れてるみたいになってるんですか…」

 

「次期部長ーー」

「はい」

「羽田さんが、いいと思う」

「はい…」

「みんなも、納得するでしょ」

「そうでしょうか」

「もうちょっと肩の力抜いて、がんばってみて、羽田さん」

「はい…」

 

× × ×

 

「あの……」

「なーに?」

「どうでしたか? …センパイは、6年間この学校に通ってみて」

 

長かった。

 

 ーーだけど、あっという間だった。

 

「………そうですか。」

 

 

「ねっ、羽田さん」

「(背筋を伸ばし)は、はい!」

「…わたし、恋愛小説、書き続けてるんだけど」

「……」

「………、

 

 男の人に抱かれるって、どんな感じ?」

 

「ど、ど、どうして、そんなこと、きくんですか」

 

「試しにさ、

 

 わたしを抱いてくれない? 羽田さん。

 

「わたしがーーセンパイを、抱く、んですか?」

「うん。

 抱かれる感触を、知りたいから」

「まさかそれを執筆に活かしたいとか」

「その、まさか」

「わたしでいいんですか?」

「いいじゃん、だれも見てないし、どうせ」

 

(眼を閉じて深呼吸する羽田さん)

 

むぎゅっ、と、

羽田さんに抱きしめられる。

 

やわらかい感覚ーー。

 

「これでいいですか」

「うん、

 じゃ、今度はーー、

 わたしが、羽田さんを抱く番。

 

 抱かれるのと、抱くのと、

 両方、感触を確かめたいから。」

 

「センパイーーいちおう言っときますけど、わたし、女の子ですよ。

 あしからず」

「もちろんわかってるよw」

 

「じゃ、いくよ」

「どうぞ」

 

ふぎゅっ、

と、 

正面から、羽田さんをハグ。

 

やわらかい感覚ーー、

そして、身が火照(ほて)ってくる。

 

羽田さんと、わたしの体温、どっちがあったかいのか、

わからない。

 

 

 

 

 

 

 

「ーーありがと。」

「さ、参考になればいいですけど、でもホントにわたしでよかったんですか?」

「ーー羽田さんに、訊きたいことがあるんだけど、」

 

(身構える羽田さん)

 

「抱かれるのと、抱くのと、

 どっちが先だった?」

 

「ーーわたしが、気づいたら、抱きついてました。」

 

「そっか。」

 

「こ、これは、い、言っときますけどっ、男の子のカラダって、女の子とは、やっぱり違って」

「ーー知ってる。」

「…センパイ……」

「あんまりケンカしちゃだめだよw

 ケンカするほど仲がいい、っていうけどさww」

 

「どうしてアツマくんとのこと、そんなに…?」

 

ーーごめん、わかっちゃうのw

 わたしがあなたより、ひとつおねーさんだからかなw