【愛の◯◯】「いっぱいケンカして、いっぱい仲直りしようよ」

はい、あすかです!!

まさかの3日連続登板!!! 

 

……、

飽きましたか?

ま、いいや。

 

今日の舞台はスポーツ新聞部、

ではありません!!

 

バンドの練習です。

方向性の違いで脱退したメンバーの代わりに、友だちの「奈美」のバンド『ソリッドオーシャン』のギターとして急遽加入したわたし。

楽器の演奏経験はなかったけれど、いろいろと振り切りたくてーーその気になったわたしは、戸部邸の住人の流(ながる)さんやお母さんの支援によってマイ・ギターをゲットして、本格的にギターの道を歩み始めたのでした。

 

@練習場

 

レイ(ベース)「うん、だいぶサマになってきたよ、あすかのギター」

わたし(ギター)「(ノ≧∀)ノほんとう!? うれしいうれしい」

レイ「まだまだ登るべき山は高いけどね」

わたし「(ノ≧∀)ノ……」

 

ちひろ(ドラムス)「レイは口が悪いんだよぉ」

レイ「ち、ちひろだって、ときどき毒舌が飛び出すじゃない。

 ちひろは、は、はらぐr」

わたし「(手を叩いて)はいはい、腹黒なんて言わない」

ちひろ「あすかが言っちゃった」

レイ「(・_・;)……」

わたし「口悪いとか腹黒なんて言い合ってたら、バンドに亀裂が入っちゃうよ」

レイ「(・_・;)……。

   (-_-;)ごめん、あすか」

わたし「謝る相手が違うでしょっw」

レイ「(-_-;)ちひろ、ごめん」

わたし「はいよくできましたーw」

 

レイ「(ピリピリして)…子供扱いしてない? あすか」

 

あ、あれっ。

レイって、もしかして、短気!?

 

場の空気がよどみ始めた…。 

 

レイ「(ピリピリピリピリ)あんま茶化すとあたし、怒るよっ」

 

ちひろ「レイ、おさえておさえて」

レイ「でもねぇっ」

 

わたし「ごめんなさい、わたしが調子に乗ってたから。

 バカにされたように感じたなら、謝る。

 言い方を考えるね。」

 

レイ「…『言い方』って、なによ」

わたし「(カーっとなり始めて)そこ!?

 わたし謝ってるじゃん!?

 もうちょっと素直にならないと、損じゃないかなあ💢

 

レイ「(そっぽを向いて、)ーーあたし今日はもう帰る」

 

ちひろ「レイ……。

 

 レイ、あすかは間違ったこと言ってないよ」

 

レイ「(ムスッとして)ふんっ」

 

 

ちょーっとまったあ、レイ

 

 

レイ「な、奈美。」

奈美「頭冷やすのはとてもいいことだけどさー、バックレる前に、ちょっと1曲聴いていきなよ♫」

 

わたし「奈美、そのCDって、

 トライセラトップス

 

奈美「わかるの!? あすか」

 

 

 

TRICERATOPS

 

 

わたし「トライセラトップスっていうバンドの、『TRICERATOPS』っていうアルバム。

 これはリマスターだけど、オリジナルは、1998年発売」

 

ちひろ「98年って、わたしたち産まれてないよ」

奈美「エヘンw」

ちひろ「エヘンw じゃないよっ。

 でもなんであすかも知ってたの」

わたし「いい音楽に、わたしたちが産まれる前も後も関係ないよ」

奈美「ほら! あすかいいこと言ってんじゃん!!

 ね、レイ?」

 

(だんまりを決めこむレイ)

 

奈美「…あんま素直じゃなさすぎるの、損だよ、絶対。

(と言いつつCDプレーヤーの再生ボタンを押す)」

 

「Raspberry」

 

 

ちひろ「わぁ、こういう曲のテンポやリズム、なんだか好き」

奈美「ちひろは気にいったみたいね」

わたし「ーー気づいたら、邸(いえ)のCD棚にあって。

 お母さんが聴いてたのかな。

 もしかしたら、お父さんがーー」

 

眼を閉じて、

『Raspberry』のメロディーを、

息を吸い込むように、からだに馴染ませる。

 

ちひろ・奈美『……あすか?』

 

わたし「ーーご、ごめん。自分の世界に入っちゃったみたいにして」

 

奈美「よし、わかった。

 クリスマスライブでこの曲、演(や)ろう

 

わたし「うん…それが、いいかもね」

ちひろ「わたしも賛成。

 問題はレイだよ」

 

レイ「ーーあと何回か聴き込まないと、納得できない」

 

わたし「(レイに向かって、できるだけやさしく)そうだよね。

 レイの気持ち、わかる気がする、わたし

 

レイ「ーー他人(ひと)の気持ちなんて、わかるわけないじゃんっ

 

(バーン、とドアを閉めて、レイが出ていく)

 

わたし「あっ……!

 レイ……

 

奈美「アフターサービスだな、こりゃ」

ちひろ「それを言うならアフターケアでしょっ」

奈美「するどい」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

× × ×

 

その夜。

レイが、とつぜん通話してきた。 

 

 

『(即座に)ごめんなさいっ、あすか!

「(びっくりして)レイ……」

『あたま、冷やしたから』

「わ、わたしも、かなり怒ってたし、悪かったのはお互いさま」

『あ、あすかは…』

「?」

『悲しいときとかーー泣きたいときに、素直に泣くこと、できる?』

 

「ーーできるよ。

 最近、そういうことがあった」

 

『すごいよ、あすかは。

 どうしてあたし、そういう人間らしいことが、フツーにできないのかなー、って』

 

「レイのほうがーーよっぽど人間らしいと、思うけどw」

 

『…………』

 

だって、ケンカしたら、仲直り、できるじゃん?

 

『………あたしの負け。』

 

「勝ち負けじゃないでしょーがっ!w

 

 いっぱいケンカして、

 いっぱい仲直りしようよ。

 

 きっとそのほうが、楽しいよ