星崎姫。
大学1年。
大学生になったら、図書館に通い詰めるぐらいにならないといけないって、
とある講義で先生がおっしゃっていた、
から、ではないかもしれないけど、
わたしは意外と真面目ちゃんなので、
大学の図書館に来ていて、
書棚にお目当ての本を見つけ、
抜き取るためにその本に手を触れよう、
と、
したら、
わたしが一目惚れした『あのひと』が、
同じ本を書棚から取ろうとしていて、
つまり、
わたしと『あのひと』の手が、
触れ合った。
「!!!!!!!」
「あ、ごめんなさい」
「す、すみません、この本…どうぞ」
「いいの?w」
「いいんです」
「よく会うね」
「ええっ」
「ほら……この前も、ぶつかっちゃったじゃん。
おぼえてるよ」
「図書館でおしゃべりはできないし、これもなにかの縁だから」
そう言って、『あのひと』は、人気(ひとけ)のない屋根下のベンチにわたしを誘った。
「きみ、教場で見たことあるよ、同じ講義受けてたでしょ」
「文学部、だったんですか」
「そ。
英米文学じゃないけどね」
「どうしてわたしが英米文学だってわかったんですか…」
「ごめん見ちゃったんだよ。
講義が始まる前、きみが『グレート・ギャツビー』の文庫本のページをぱらぱらめくってたの。
それに、きょうも図書館でフィッツジェラルドの本を取ろうとしていたじゃんか。
いいよね、『グレート・ギャツビー』」
「…何年生ですか。わたしは1年です」
「何年生だと思う?」
「3年」
「あったりー!」
「ーーー」
「? どうしてそこで押し黙っちゃうw」
「せ、せんぱいは」
「ああ、ぼく、『トキタ』っていうんだ」
「どんな字を書くんですか」
「時間の時に田んぼの田」
「じゃあ時田せんぱい、」
「せんぱい、はいらないかなw」
「じゃ、じゃあ時田さん、あらためてお訊きしますが、」
「はい」
「…フィッツジェラルドとサリンジャーだったらどっちが好きですか」
「(・∀・;)」