「アツマくん、ジャガイモの皮、むいてくれない?」
おれと、愛と、母さんとで、
ルミナさんのお誕生会の準備をしている。
「ーーバイトでジャガイモの皮むきが上手になったというわけではなさそうね」
「あのなー、厨房で働いてたわけじゃないんだよ」
「おれもさ、なんか料理作ろっか」
「うーん、別に?」
「おいひでぇな!!」
「間に合ってるの。ごめんなさいねw」
「ま、いっか。
早くルミナさんとギンさんに、おまえが作った料理、食べてもらいたいな」
流さんが帰ってきた
「おっ、僕も手伝うよ~」
あすかが帰ってきた
「あっ、わたしも手伝う~」
× × ×
ギンさんとその友達が、先にやってきた
「ここがきみの邸(いえ)か、戸部くん。すごいなあ」
「へへ。
えーっと、鳴海さんはーー」
「空気を読んだ。
彼は自重したよ」
「それでこそ鳴海さんですw」
「ルミナの天敵だからなあw」
「それでケーキ買ってきたよ」
・ルミナさんのバースデーケーキを持ち上げるギンさん
『わぁケーキだぁ』
「…妹さん?」
「(-_-;)いいえ、妹ではないです。妹はキッチンのほうに。
こらっ、愛、そんなにはしゃぐな」
「ご、ごめんねアツマくん、さいきんケーキと縁がなかったからw」
「(ぴしゃり、と姿勢を正して)はじめまして。
羽田愛といいます。高校2年です。
この邸(いえ)に居候させてもらっています。
アツマくんがいつもお世話になっております。」
「山田ギン、大学3年です、よろしく。
こっちのほうが戸部くんにお世話になっているくらいだよww」
「ほんとですかぁ~?」
愛のバカヤロウ。
「ぼくたちプールに行って泳いだりするんだけどさ、戸部くんはまるでインストラクターだよ。
オリンピックにも出れたんじゃないか……っていうぐらいの泳ぎっぷりで」
「そ、それは大げさすぎますよギンさん」
「そうでしょう?
アツマくんは、わたしのヒーローですから」
「……愛?」
「~♫」
「愛さんのヒーローになってあげたらいいじゃないか、戸部くん」
「ぎギンさんまでっ」
「……おれは、とてもルミナのヒーローには、なれない……」
「(;´Д`)こ今夜ぐらいは、ルミナさんのヒーローになってくださいよ、おねがいしますよ」
「できるかな、おれに?w」
× × ×
ルミナさんとその友達がやってきた
「ーーケーキ、用意してくれたんだ」
「あたりまえじゃあないか」
「ありがとうーーギン。」
「ルミナ」
「えっ、なに!?」
「その服……、
いいな。
おれはファッションのこととか詳しくないけど、
今日のは似合ってるよ。」
「……どうしちゃったの、ギン?!」
「ちょっとだけ気を配ってみたんだよぉ。
悪いか?」
「(はにかんで、)…悪いわけ、ないじゃない。
すっごく嬉しい、ギン。」
ルミナさんの女友だちが、ふたりを眺めてニヤニヤしている。
ーー目ざとい。
お誕生会のセッティングができた
「ーーさすがにローソクは21本も立てられないけど」
「いいよ、気持ちだけで」
「ーーでは、茅野(かやの)ルミナさんの末永い健康と幸福を願って、」
「なにそれ!?
ふつうにやってよギン」
「ーーそうだった。」
「ーーでは、茅野ルミナさんの21回目の誕生日を祝って」
『ハッピバースデートゥーユー
ハッピバースデートゥーユー
ハッピバースデー ディア ルミナちゃん(/さん)
ハッピバースデートゥーユー』
♫拍手喝采♫
「お料理、愛ちゃんが作ったの? すっっごく美味しい」
「ほとんどこいつのレシピです」
「気に入ってもらえてうれしいです」
「……嫁入り修行、しようかな」
「(゜o゜; わ、わたしにですか!? どういうことですか!?」
× × ×
「ねえ、アツマくん、炭酸…飲んでいい」
「お調子者めが。
おまえが炭酸飲んだら酔っ払っちまうだろ。
収拾がつかなくなる」
「ちぇっ」
「(-_-;)舌打ちすんな」
「ルミナさんギンさん、わたしとあすかちゃんは宿題をするので……」
「高校生だねえ」
「楽しんでってくださいね」
「うん、ありがとう、お料理」
「愛さんの料理、週1ぐらいで食べに来れないかなあ」
「突拍子もないこと言うんじゃないのっ、ギン」
「戸部くん、すごい娘だね、羽田愛さんは」
「性格以外は長所だらけですね」
「うれしかったよ、あたしたち。
あたしとギンに、1曲ずつ、ピアノで弾いてくれたじゃない。
あんなのは初めてだったから」
「そうだなあ、かつての『おたんじょーかい』は、もっとこじんまりしてた」
・流さんがお酒を運んできた
「アツマは飲んじゃだめだぞ」
「わかってるって」
「た、高そうなお酒ですねえ」
「この日のために買ったんだ」
「それはどうも…ありがとうございました、
ってギン! 言ってる端から飲んでるし」
母さんも、隅っこのソファーで、気持ちよさそうに流さんのお酒を飲んでいる。
ルミナさんとギンさんのお友達が帰って、
お誕生会のフロアには、
・おれ
・ルミナさん
・ギンさん
・母さん
・流さん
の5人だけになった。
いま何時だろう。
愛とあすかは、もう寝ちまっただろうか。
「ながりゅく~ん、もういっぱい~」
「(;^_^)強いですねえ、明日美子さんはw」
「ねぇギン」
「なんだ」
「あたし、やっぱし公務員受けることにした」
「そっか。」
「ねぇ」
「『ねぇ』ばっかりだな、ルミナw」
「ねぇ」
「ほらまた言った」
「……不安になってこない?
大学3年の後期にもなると。
『終わっちゃう』っていう不安が」
「なにが『終わっちゃう』んだよ」
「モラトリアムみたいなもの。
じきに社会人になって、もう子供じゃいられなくなる」
「気が早いなあ」
「それにさ、」
「(すっかり顔が赤くなって)ヒック…なによぉ、ギン。…ヒック」
「大学が終わっても、おれとおまえが離れ離れになるわけではないだろ?」
「(酔っぱらったのか)歯が浮くようなセリフゆーね、ギンわ。
きめじぇりふ、ってやつー?
(ギンさんの肩をガンガン叩いて)ポイントしんてーしてあげるー」
「もしかして、ルミナさんお酒弱かったり」
「一定以上飲むとこうなる」
「なあ…ルミナよ。
つらいことがあったら、おれに言えよ」
「いまはにゃい」
「就職活動するなかで、つらいことはいっぱい出てくると思うんだよ」
「そうかにゃ~??」
「もし、そういう、つらいときがあったら、おれに話してみろよ。
家族だろ」
「あたしギンのいもうとになったおぼえないんだけど~」
「ーーじゃあ、いまだけ、ルミナはおれの妹だ。
家族だ」
「いもうとはヤーダ」
「どうしてさ。
……って、る、るみなっ」
「(ベロンベロンになってギンさんに抱きつき、)
あたし、ギンのおよめさんがいい」
「ーーじょうだんだろ?」
「じょうだんじゃないもん、じょうだんじゃないし、あたしこどもんころのゆめが、ギンのおよめさんだったんだもん、そんでもって、あたしギンのおよめさんになるの、
あたしまだこどもなの」
「(ルミナさんに絡みつかれたまま、)ーー戸部くん」
「( ゚д゚)はい」
「ルミナに水を持ってきてやってくれ」
「……( ゚д゚)かしこまりました」