【愛の◯◯】鳴り出される『リルラ リルハ』

「方向性の違い」によりメンバーが脱退した同級生・奈美のバンドに勧誘された、わたくし戸部あすか。

 

・なにか新しいことを始めて、心機一転したい!

・おねーさんやアカ子さんじゃないけど、なにか楽器ができたらカッコいい!!

 

ーーまあそういった理由で、ギター担当として奈美のバンドに加入することに、その気になってしまったわたくし戸部あすか。

 

 

きょうは、放課後、スリーピース状態の奈美のバンドが、わたしに演奏を披露してくれることになった。 

 

「奈美のバンドって、なんて名前?」

『ソリッドオーシャン』

 

「(;´Д`)す、すごい名前だね…」

「そう?

 わたしの名前が『奈美(なみ)』だから、『オーシャン』。

 それで、もともとツインギターだったから、『ソリッド』ってのを前に付けたの」

「略称とかは?」

「んー、『ソリシャン』? なんかアジカンっぽくて良くない?」

 

(^_^;) ちょっと、バンド名は考え直したほうがいいかもなあ。

言わないでおくけど。 

 

× × ×

 

そんでもって、奈美以外の『ソリッドオーシャン』の構成メンバーを紹介される。

 

ベース担当の、レイちゃん

ドラムスの、ちひろちゃん。 

 

 

『よろしくね、戸部さん』

 

「こら、ふたりとも、よそよそしいよ。下の名前で呼んだほうがいいよ」

え、じゃあ……あすか、さん。

ちひろは照れ屋なの。

 ドラムを叩き始めると、人が変わるんだけどねw」

「(^_^;)そうなの…。」

 

「あすかちゃん、これからよろしくね。レイ、でいいよ。ちひろと組んでリズム隊なの」

「あ、リズム隊って、ベースとドラムひっくるめて、そう呼ぶんだよね」

詳しい!

「(^_^;)げ、元気でいいね、レイちゃんは。」

「元気だよ~。

 あと呼び捨てでいいから」

 

(^_^;)いきなり呼び捨てか……。 

 

× × ×

 

そしてバンドの3人は演奏のスタンバイをする。

 

わたしが初めて聴く、『ソリッドオーシャン』、略して『ソリシャン』(?)の演奏。 

 

「えーっと、奈美、曲目は?」

「あっそうだそうだ。

 あすか知ってるかなあ?

 木村カエラの、

 『リルラ リルハ』って曲。」

 

 

リルラ リルハ

リルラ リルハ

 

 

「ーー知ってる。

 というか、歌える

 

「∑(・∀・; )まじで!?

 わたしたちが生まれたばかりの曲なんだけどな」

 

「そういう時代の曲のほうが……むしろわたし詳しいし、好きなの」

 

バンド一同『へえ~

 

 

レイ「じゃああたしらと気が合いそうね。

 最初は、ちひろが聴かせてくれたんだけどね、『リルラ リルハ』。

 そうでしょ、ちひろ?」

ちひろ「……(無言)」

奈美「こらっ、ちひろ、黙らない!

レイ「おこんないの、奈美w 

 はやく演(や)っちゃおうよ。そのほうがちひろも『その気に』なるっしょ」

奈美「それもそう。

 よーっし、みんないくよー」

 

ドラムのちひろがスティックでカウントを始め、

あのイントロのリフが鳴り出される。 

 

~♫『リルラ リルハ』の演奏♫~

 

 

 

 

奈美「……(弾き終えて、)じゃんっ」

ちひろ「じゃんっ、はいいでしょw 奈美w」

奈美「ちひろはいっつもわたしの『じゃんっ♪』に突っ込むんだからぁ~」

レイ「ちひろが終始無口なよりはいいんじゃない?w」

奈美「でもさ~」

レイ「ーーで、どうだった、あすかちゃん?

 感想は?」

 

「『あすか』って、呼び捨てにしていいよ。

 レイ。

 

「あっ!! そうだった。

 じゃああらためて、あすか、感想を」

 

ーーすごかった。

 生演奏って、こんなにアツいんだね。

 

 わたし、途中からもう一緒に歌ってた。」

 

「そりゃそうさ。アツいに決まってる。

 でもあすか、自分で演奏したら、もっともっともっとアツいんだよ!?

 あたしら何十回何百回と練習してこの曲演(や)ってるんだからね。

 とくにギターは、ベースのあたしよりも、もっともっと」

「そう!

 ツインギター!!

「もうw 奈美はこだわるんだからww」

 

 

「ーーうん。

 わたしもギターに触れてみたい。

 それで、クリスマスまでに、人前で演奏できるように。」

 

(うんうん、とうなずく3人)

 

 

「そのまえに、奈美」

「なに? あすか」

「奈美、もうひとつのギターはもう調達してあるの?」

「Σ(^_^;)」