【愛の◯◯】もしもギターが弾けるようになったなら

バンドメンバー?

 わたしが!?

 

寝耳に水。

わたくし、戸部あすか、

2学期始まっていきなり、

ガールズバンドのメンバーに誘われるの巻。 

 

誘ってきたのは、高校の同級生の奈美。

奈美とは中学も同じだ。

そういや、前からギターやってたっけ、奈美。 

 

奈美のバンドに欠員が発生したらしい。

 

「でもどうして?」

「ほら、方向性の違いってやつ、方向性の」

「そんなのほんとうにあるんだ……。

 

 って、

 

 楽器できないよわたし!?

 知ってるでしょ奈美!!」

「今すぐできるようになれなんて言わない。

 クリスマスになるくらいまでに、モノにできればいい」

「ウチの学校の文化祭には出ないの?」

「出るよ」

「でもウチの文化祭、あと1ヶ月切ってるよね」

スリーピースでやるから」

「あ」

 

ーーエレキギターか。

ーーうーん。

 

ギターの穴埋めにわたしを推挙したのは、久里香(中学の同級生)らしい。

なんでかなあ、久里香。

ほかに候補は思い浮かばなかったの、久里香。

 

「す、スリーピースのままでも、できるんじゃあないの」

絶対にツインギターのほうがいいの

「そ、そう……」

 

奈美、すごい迫力。 

 

「でも、なんで『クリスマスになるまでに』、なの?」

「クリスマスイブに、ライブやらしてもらえることになってるから」

「まさかライブハウス!?!?」

「特別にね。若い子が集まって、フェスみたいなの演る予定。だから出番は短いけどーー」

「けど???」

「やっぱりツインギターで出たいの。

 あすかはスジがいいと思うの」

「なにを根拠にーー」

「あすか、音楽好きでしょ?」

「うん…」

 

たしかに、音楽は好きだ。

 

「それに、ピアノの天才が、そばにいるじゃないの!!」

「も、もしかしておねーさんのこと!?」

「そう! 羽田愛さんのこと」

「ひ、弾けるのはおねーさんなんであって、わたしは聴いてるだけ」

「愛さんの演奏を聴いてるだけで、絶対音感が自然とーー」

「ありえないでしょっ!!」

「でもなー、あすかは絶対ギターこなせると思うんだよなー、久里香も熱弁してたし」

「久里香はなんて言ってたの」

「『あすかはギターに『』を吹き込む』って」

「はぁぁ!?」

 

ーー、

ーーあ、

でも、

』って、

なんか、いいかも。

だって、いまのわたし、

魂が抜けて、抜け殻状態だもん。

 

それに、

つい先日、

もしもピアノが弾けてたらーー』って、 

悔しい思いをしたばっかりだし。

 

ーーわたしにも何か楽器ができたならーー

 

 

よーし、わかった奈美!!

 わたし、アカ子さんに負けない!!!

 

「(^o^; ……あかこ、さん?」