【愛の◯◯】困ったら岩波文庫の『三国志』でしょ!

失恋の傷が癒えないのか、

朝食の席からガチャン! と立ち上がり、

ガチャガチャガチャ…と食器を騒がしく片付ける、

あすかちゃん。

 

「あすか、食器割らんように気をつけるんだぞ~」

わかってるお兄ちゃん!!

「あすかおまえきょうは何の日か知ってるか~?」

馬肉の日!!

「焼き肉の日だよ。

 夜にバーベキューでもしねぇか? 邸(うち)のみんなで」

 

「アツマくん。」

「(・_・;)え、愛、バーベキュー、だめ?」

「ふつうのごはんにしようよ。

 わたしがおいしいごはん、つくってあげるから」

 

(アツマくんもうちょい空気読んでよ)

(BBQじゃ元気出ないのか)

(そういうことじゃなくて、あすかちゃんそっとしておいてあげよう、ってこと)

(たしかに)

(お兄さんとして心配なのは、わかるけど…ね)

 

 

× × ×

 

ーーで、

わたしとアツマくんは、

きょう、東京国立博物館に、

展覧会を見に行く。 

 

特別展「三国志」

 

「アツマくん、チケット代、ある?

 わたしは貯金くずしたけど」

「おまえが払う必要ないよ」

「どうして?

 もしかしてわたしのぶんも出してくれるの?」

「ああ」

(ノ≧∀)ノやったぁ~

「こ、コラ! あんまり騒ぐな」

 

「バイト代から?」

「バイト代はまだだよ」

「じゃあお金の出どころ、どこなの」

「…母さんに…もらった…」

「うん、正直でよろしいw」

「クッ…」

 

「でもおまえ好きなんか? 三国志

「好きよ。いま読んでるし」

横山光輝のマンガしか知らないが…」

吉川英治北方謙三の小説もあるけど、

 わたしはやっぱり、岩波文庫

 

 

完訳 三国志〈1〉 (岩波文庫)

完訳 三国志〈1〉 (岩波文庫)

 

 

完訳 三国志〈1〉 (岩波文庫)

 

「おまえは困ったら岩波文庫、だなあ」

何いってんの! 困ったら岩波文庫に決まってんでしょ!!

「そうかあ?」

 

「『三国志』はいいわねえ、読んでて勝手にはなしが進んでくから」

「そうなの?」

「あんまり読み手が神経使わないと思うの」

「(^_^;)神経、ねえ…。

 おまえの個人的意見だけどなあ」

「そうね個人的意見ね」

「あっさり認めた」

 

「さいきん、本読むと疲れることが多いの。でも、『三国志』みたいな本読むと、落ち着くの」

「精神的負担ってやつ?」

「まあそうね」

「じゃあ『三国志展』があって、ちょうど良かったじゃないか」

「でしょ?」

「ここからちょっと遠いけど」

「まあしかたないじゃない」

「あ、交通費もおれが出すから」

(ノ≧∀)ノイェーイ!!

「(^_^;)……」