【愛の◯◯】「神さまって、いるのかもしんない」

一ノ瀬先生は、クールで強くてかっこいい、保健の先生だ。 

 

ほけんしつ

 

<ガラッ

 

「あら、羽田さん、最近よく来るね」

「(´・_・`)すみません……」

「あやまる必要ないよw」

 

「羽田さん、寝不足なんでしょ」

「(゜o゜; どうしてわかったんですか……」

「顔色。

 ベッド、あいてるよw」

 

 

 

 

 

× × ×

 

「むくり。……あ」

 

ベッドで爆睡してたら、もうこんな時間。

 

 

× × ×

 

一ノ瀬先生「おはよう、羽田さん」

わたし「おはようございます…」

 

伊吹先生「おっはよー♫

わたし「(*_*; あ、あれ、伊吹先生と川又さんがいる」

伊吹先生「偶然通りかかったら、お菓子のいい匂いがしたから」

わたし「鼻がいいんですね」

伊吹先生「嗅覚、ってやつ?」

 

一ノ瀬先生「羽田さんはコーヒーがよかったよね」

わたし「どうして知ってるんですか」

一ノ瀬先生「女のカンw

わたし「(゜o゜; !?」

一ノ瀬先生「(^_^;)じょーだんじょーだん。

 伊吹先生と川又さんが教えてくれたの」

 

川又さん「羽田センパイ、元気だしてください!

わたし「ありがとう…いろいろとダメダメだよね、最近のわたし」

川又さん「そんなこと…ないですけどっ

わたし「どうしてそこで照れちゃうのw」

 

わたし「ねえ……川又さんは、将来の夢、とか、ある?」

川又さん「うーん、まだはっきりしてないですね。

 実家のカフェを継ぐかもしれないし。

 そこは、迷ってます」

わたし「そうか。

 (´・_・`)わたしは、ないんだ……将来の夢。

 ない、というより決まってない。

 ほんとうは、はやく決めたほうがいいんだけどね。

 いくらたくさんの本読んでても、なにかになれるわけじゃあないし。

 しかもさいきんは、本すらも全然読んでいない…」

 

伊吹先生「(おだやかに)小説とか、書く気はないの?」

わたし「それが、以前から、まったく書く気が起こらないんです」

伊吹先生「(おだやかに微笑み)不思議だなあw」

 

一ノ瀬先生「(コーヒーを持ってきて)焦らないの、羽田さん。これでも飲んで落ち着きなさい」

わたし「カフェインたっぷりですけどね」

一ノ瀬先生「あはw」

わたし「でも…ひとが淹れてくれたコーヒー飲むと落ち着きます、いただきます、一ノ瀬先生」

 

川又さん「あの、一ノ瀬先生は、どうして保健の先生になったんですか?」

伊吹先生「ん……川又さん、そこはちょっとデリケートな事情があるから、問い詰めないほうがいいかも」

川又さん「(゜o゜; えっ?」

一ノ瀬先生「問い詰めって、大げさすぎるでしょ、伊吹先生w」

 

一ノ瀬先生「別にデリケートでもなんでもないし、隠すことでもないですよ。生徒には話してることだし。

 川又さん、『訊いちゃいけないこと訊いちゃった』とか、ぜんぜん思わなくていいからね。

 

 わたしね…中学生のころ、保健室登校してたときがあるの。

 自分を強く見せすぎようとした結果、折れちゃったのね。

 それで、学校には来るんだけど、教室には入れない、って状態が長く続いていて。

 でも、保健室の先生が、すごく優しくて……。

 話し相手になってくれて……。

 わたしはその先生のおかげで、自信と元気を取り戻すことができて、だから今のわたしがあるのは、その先生のおかげ。

 

 いちばん尊敬するひとの、背中を追いたくて…っていうとヘンだけどw 保健の先生を目指した理由は、そういうことなの。」

 

川又さん「……」

わたし「……」

伊吹先生「……」

 

一ノ瀬先生「なにみんなして神妙な面持ちなのよw」

 

わたし「……………わたし、これまで一ノ瀬先生を、ひとつの面でしか見ることができていなかったような気がします」

一ノ瀬先生「えww」

わたし「クールで強くてかっこいい先生だって」

一ノ瀬先生「えっ、それ『ひとつの』面じゃなくない?ww

『クール』で『強く』て『かっこいい』って、みっつの面だよそれww」

わたし「細かいことはいいんですよ!

 でも、意外な側面や背景、っていうのは、どのひとにもあるものだって、わたし思いました」

一ノ瀬先生「意外だった? わたしの過去」

わたし「(コクン)」

一ノ瀬先生「でも、思春期って、そうなりやすいというか……伊吹先生の言葉じゃないけど、『デリケート』な時期だったんだね、わたしにとって。

 触れられたら、すぐ傷ついちゃう」

わたし「でもよかったじゃないですか、恩師になる先生と出会えて」

一ノ瀬先生「(笑顏で)そうね、神さまって、いるのかもしんない」

 

伊吹先生「思春期といえば……。

 一ノ瀬先生は、どんな恋愛体験、してたの?w」

一ノ瀬先生「(;´Д`)それは『デリケート』というより『プライバシー』的な話でしょうが!!