【愛の〇〇】ごはんにする? ピアノにする?

急な天候の悪化により、

わたしたち一家がむかし暮らしていた所を訪ねる予定だったが、

それもできなくなってしまった。

 

わたし「残念だったね、利比古」

利比古「仕方ないよ。

 でも、むかし遊んだ公園はーー見てみたかったかな」

わたし「わたしがよく男の子とケンカしてた公園?w」

利比古「そうw」

 

ある時から、公園で遊ばなくなり、

男子と取っ組み合いをして服を汚して帰ってきて、おかあさんに叱られることもなくなった。

 

本ばかり読みふけっていたわたし。

利比古には、さみしい思いをさせてしまったかもしれない。

 

利比古「思い出すよ。こんなに酷い天気じゃなかったけど、雨が降ってて、お姉ちゃんの同級生の男子に、ボロボロになったお姉ちゃんが背負われて帰ってきたときのこと」

わたし「わたしが男子に? ケンカで負けちゃったのかしら」

利比古「勝ち負けはわからないけどーー、

 たぶんその男子、お姉ちゃんのことが好きだったんだよ」

 

わたし「ど、ど、どうしてわかるの……」

 

利比古「(^_^;)声が震えてるよ」

 

あすかちゃん「利比古くん、おねーさん、小学生のころからモテてたの?」

利比古「あ、あすかさん」

 

あすかちゃん「うーん、もしおねーさんが、中学高校と、男女共学のままだったとしたら……w」

 

声を上げて笑うあすかちゃん。

わたしは不本意だった。

 

わたし「そんなにおかしーかなー?」

あすかちゃん「きっとすごいことになってますよ、モテるどころじゃないですよwww」

 

わたしの知らないところで、

わたしを好きだったひとがいるってことか。

そのひとが今、幸せだったらいいな。

 

わたしは、

わたしが初めて好きになって、失恋したひとと、

わたしが2番目に好きになって、思いを打ち明けて、受け入れてくれたひとと、

いっしょに暮らしている。

 

× × ×

わたし「ねぇ、利比古。」

利比古「なに?」

 

わたし「利比古……、

 

 ごはんがいい?

 それとも、

 ピアノがいい?

 

利比古「な、なんだよその質問は!?」

わたし「ごはん作ってあげるか、ピアノ弾いてあげようと思って」

 

わたしはかわいい弟に顔を近づける。

 

わたし「ね、どっちにする?」

利比古「…………………………ピアノで」

 

 

 

『ねえ、おねーさんの弾くピアノって、音がキレイだよね、そう思わない利比古くんも?』

『思います。

 いいな、お姉ちゃんは特技がいろいろあって。

 ぼくにはなんにもないや。』

『利比古くんは、まだこれから、だよ』

『……』

 

『あすかさん、すみませんでした』

『なにが?

 もしかして校内スポーツ新聞見せたときのこと?』

『そうです。なんだかプライバシーに触れる部分まで追及してしまったみたいで……』

『そうねえ……、

 3割だけ許してあげる、

 のこりの7割は、まだ許してあげないw』

『えぇ……』

 

 

ピアノを弾きながら思わず笑ってしまった。

 

わたしは、耳がいいのだ。