ギン……
ギン……?
おいてかないで、
おいてかないで、ギン!
『……ギン、あたしのほうも見て…』
『( ゚д゚)ハッ!』
夢だった。
居眠りしてた。
戸部アツマくん「おはようございます」
あたし「こんにちは」
寝ぐせ。
寝ぐせついてる、
恥ずかしい。
戸部くん「ギンさんからの差し入れです」
Σ(OωO )
あたし「あっ、そう」
袋を受け取った。
ロッテリアのリブサンドが入っている。
戸部くん「うれしそうですね」
あたし「べ、別に……、
平成いっぱいでリブサンド終わるから、食べとかないともったいないから――」
悟られた。
あたしの好物が、
ロッテリアのリブサンドだってこと。
ギンだけが知っている。
戸部くん「じゃあおれはこれで」
あたし「ちょっと待って!」
戸部くん「へ?」
あたし「あなた、両想いのひとがいるのよね」
戸部くん「……この前、ルミナさんに往復ビンタされたときのことですか。
片思いされたことがあって、
『いまは両想いだ』って言ったら、
ルミナさんに肉体言語を食らって――」
あたし「肉体言語!?
あんたオタク!?」
戸部くん「ちがいます」
そしてあたしはそのあと、
戸部くんの説明を聞いて、
羽田愛ちゃんという娘の存在と、
彼女と戸部くんの関係にまつわるいきさつを詳(つまび)らかに知った。
戸部くん「しょうじき、『両想いだ』なんて、思ってもみないことを言ったもんです」
あたし「あんまり人前で、『片思い』『両想い』とかあけっぴろげに言わないほうがいいわね、たしかに。」
戸部くん「でも言っちゃったんです」
あたしは39秒くらい考えたあとで、こう言った。
あたし「『距離感』が、つかめない…?」
戸部くん「そうですね、距離感がわかんないです。
いきなり人前で愛のことを、
『おれの大切な人!』
とか言っちゃったり――。
おれ、多分、『彼氏』とか『彼女』とか、そういうことばが嫌いなんです」
あたし「じゃあ、彼女が『彼女』じゃなかったら、『彼女』以外のなんなの?」
戸部くん「なんなんですかね……。
それこそ、あんましそういう話、人前でするもんじゃあないんじゃないですか」
<ドタドタドタ
ギン「おぅい、アツマくんがあんまり遅いから連れて帰りに来たぞい」
戸部くん「あ、ギンさんすんません」
取り込み中だったのに……。
あたし「取り込み中だったのに……。」
ギン「冷めないうちに食えよルミナ」
取り込み中だったのに……。
ギンのアホっ
あたし「戸部くん、ギンの弱点教えてあげる」
戸部くん「何ですか?」
あたし「ギンはエビバーガーが上手く食べれない」
ギン「(´・∀・`)ハハハ…」
あたし「こ、こんど、そっちの部室で、公開エビバーガー処刑してやる……」
ギンと戸部くん「?」
あたし「ギンがエビバーガー食べるの失敗するとこ見せて拡散してやるんだから!」
戸部くん「いや、食べ物で遊ぶのはよくないと思いますw」
ギン「…今度両サークル合同でSNSの使い方教室でもやるか?w」
あたし「拡散! 拡散!!」