ハルは自転車に乗っていた
「♪~(´ε` )」
「!!」
<ドンガラガッシャーン
「( ;゚д゚)……大丈夫ですか!?」
「そちらこそ。と言うか、そちらの方が大丈夫ではないのでは?」
「あー、これくらいの傷だったらほっといても治りますよ」
「だめですよ消毒しなきゃ、わたし、家近いんで」
「えええ!?」
「わたしの家というよりも、住み込みで働いているんですが」
「お屋敷ですか!?」
「まあそういったところです、それに自転車も直さないと」
「確かに。でもーー」
「屋敷の主人が機械いじりが好きで、自転車を直すのも得意なんです」
「はぁ…」
「それにあなたがせっかく買った卵、割れちゃったじゃないですか」
「確かに」
「冷蔵庫に卵が腐るほどあるので」
「卵は腐ったらだめじゃないですか!」
「あははw」
「・・・(苦笑)」
ふたりは歩いた
メイドさんなのか・・・?
でも、普通の服だし。足、細いなあ。
× × ×
「(;´Д`)も、もしかしてここですか」
「はい」
「アカ子さんの苗字だ…」
「あれ、お知り合いなんですか?」
「いちおう」
「着替えてくるんで、少し待っててください」
・彼女はメイド服でやってきた
(めメイド服だあ。産まれて初めて見る)
「紅茶でよかったかしら?」
「なんでもいいです」
『コポポポポ…』
「前方不注意だったのはわたしのほうですから、おもてなしさせていただかなくてはと思いまして」
「ぼ、ぼくのほうが悪かったです」
「そう言うと思いました〜w」
「はいぃ!?」
「からかわないで下さい」
「熱いですよ」
「うげっ!」
<ガチャ
「蜜柑!」
「あら。」
「(唖然呆然)」
「蜜柑、やたら騒がしいと思ったら…な、な、なに、なにハルくんで遊んでるの!?」
「行きあたりで、こう、バッタリと」
「は!?」
(事情を説明する蜜柑とハル)
・アカ子は黙ってものすご〜く大きいグランドピアノに向かう
「(ハルの傷の手当てをしながら)お嬢さまってつめた〜い!w
ね、ハルくん?」
「いや、怒ってると思います…」
「(大きな音を出して)そうよ!! 男子高校生をもてあそんで…!」
「いまごろご主人様が満面の笑顔で自転車を修理してると思いますわ」
「(不協和音を出し)蜜柑!!」
「そういや、きみの苗字、自動車の会社と同じだねえ」
「(ピアノをめちゃくちゃに弾きながら)そうよ!! にぶいわね」
「もしかして」
「もしかしなくてもうちは自動車メーカーの経営者一族よ」
「ね!根っからお嬢さまなんです」
「(またも不協和音を出し)蜜柑! 怒るわよ」
「いやきみ明らかにもう激怒してるよ」
× × ×
・メイドの蜜柑さんがハルをもてなしているあいだ、なぜかグランドピアノに居座りアカ子は演奏し続けるのだった。
「アカ子さん」
「なによ、蜜柑」
「え、いまお嬢さまって言わなかった」
「(小声)『ハヤテのごとく!』って漫画知らないですか」
「知らないです」
「(アカ子に聞こえるように)『ハヤテのごとく!』という漫画にはマリアさんというメイドさんが出てくるんですが、お嬢様のナギちゃんのことを呼び捨てにするんです。
もちろんフォーマルでないところで、ですが」
「はあ…読んだことないから想像しかねますが」
「蜜柑! 用件を早く言いなさい」
「アカ子さん、あなた今朝、夕食はオムライスがいいって言ってましたよね?」
(突然ドガーン!!と鍵盤の蓋を閉めるアカ子)
「ひいっ!」
「だめでしょー、ピアノ壊れちゃいますよー、お父さんに怒られちゃうんだから。
罰として夕食のメニューは変更です(去っていく)」
「どこ…行ったの」
「キッチンよ」
「その…蜜柑さん、とはどういう関係なの」
「見てのとおりよ」
「見てのとおりって」
「長い付き合いで、年齢も近くて、よそよそしいほうが変に見えるからって、家族の方針もあってーーそれであんなフランクな態度をとっても許されるの」
「ふーん」
「!(目を見開いて)ハルくん。」
「へ」
「バッグが破れてるじゃない」
「あー、ほんとだな」
「(近づいて)ちょっと見せて」
「え!?」
「縫ってあげる」
「えぇ!?」
「蜜柑のせいで破れたんだもの」
「縫うって、時間かかるんじゃ」
「あなた家庭科の授業受けてこなかったの!?(バッグを取る)」
「だめだよ悪いよ、おいとまするよ、もう(バッグを取り返そうとする)」
「さ、裁縫は愛ちゃんより得意なのよ、蜜柑はもっと得意だけどっ(バッグを譲らない)」
「卵もらったら帰るってば(バッグを引っ張ろうとする)」
「ダメ! バッグに乱暴しないで! 引っ張るともっと破れちゃう(ついにハルからバッグを強奪し、バッグを抱き留める)」
「いつからきみのバッグになったんだ」
「あっ…」
「頭冷やそうか」
(ぽすっ、とハルのバッグを落とす)
× × ×
日曜大工のような出で立ちのアカ子の父さん「おぅい自転車直ったぞい」
蜜柑「はい、卵10個パック、おみやげもついてますよ〜」
・バッグをめぐりもつれあった末に、見つめ合い状態のふたり……
アカ子パパと蜜柑『どうしたの?』