【愛の◯◯】18年目の相合い傘

湘南地方

来てしまった。

ひとりだけで。

 

幼なじみの鎌倉キョウくんが、

住んでいる土地にーー

 

行きの電車。

なんとかガマンできた。

でも、

キョウくんに6年ぶりに会うと思うと、

そこはかとなく胸が苦しくて、

何度か深呼吸をして、

ほかの乗客に変な目で見られたかもしれない、

ーー、

だ、だめ!!

マイナスの思考回路になっちゃ、だめ、わたし!!!

 

「(・_・;)たぶん…ここらへんが、キョウくんの住所の近く」

 

 

「ーーーーーー」

足が止まる。

脚がぶるぶる震える。

手のひらにじんわりと汗をかく。

 

まるでわたしの目の前に、開けちゃいけない部屋のドアが存在しているみたい。

そのドアを開けたら、わたしの心臓は張り裂けてしまうかもしれない。

 

勇気……、勇気。

 

 

でも。

 

 

雨が降ってきた……

 

「傘、傘」

 

「あ、あ、折りたたみ傘、落としちゃった。

 

 どうしよう、

 気分が悪いかも、

 このまま、雨に濡れて、うずくまっていたら、通る人にヘンにみられちゃう

 

たすけて、

たすけて、

でも、

わたし、

だれをたよるの。

 

八木が、電話で、受験の結果を伝えてきた。

 

わたし、日東駒専もひっかからなかったよw

 

そう伝える八木の声に、卑屈さは微塵もなく、朗らかだったーー。

 

歩き出さなきゃ。

八木は自分でもう一度歩き出そうとしている。

だったらわたしもわたしの足だけで歩き出さなきゃ。

 

 

「でも、でも、わ、わたし、

 たちあがれない。

 

 スマホスマホスマホスマホは、どこ、」

 

 

むつみちゃん?

 

 

(゜o゜; きょ、キョウくん!?

 

 

「そうだ、むつみちゃんだよね、キョウだよ、覚えててくれたんだね。」

 

キョウくんだーー、

キョウくんが、助けてくれる。

 

キョウくんに、

身体を起こしてもらって、

傘をさしてもらって……。

 

キョウくんの肩にすがりながら、

相合い傘で、キョウくんの家まで、いっしょに歩いた。

 

むつみちゃん、からだ弱かったもんね。

 ごめんな。

 もうちょい早く迎えにいきゃあよかったな

わたしひとりで行かなきゃだめだと思ったの。

 じ、自信は……なかったけど。

よくがんばったんだな

 

涙が止まらなかった。

 

 

キョウくんのお父さんもお母さんも、ぜんぜん昔通りで。

とりあえず、濡れた服を、着替えられるだけ着替えて。

お母さんのいれてくれた紅茶を飲んで。

用意してもらっていたお昼ごはんを4人で食べて。

 

窓辺に雨が降りしきるなか、

午後は、 昔話に花を咲かせ、

それから、

離れ離れになってからの、

キョウくんとわたしの6年間のことについて、

じっくりと語り合った。

 

 

 

で、「どうやって帰ったか」、って?

 

ヒ・ミ・ツ。