【愛の◯◯】「この西脇順三郎ってジイさんの詩、オモシロイな」

回想・おれん家(ち)でのこんな一コマ

 

 とある岩波文庫のとある詩人の作品全集を、ホットカーペットに寝っ転がりながら、一心不乱に読んでいたら、昼のおひさまがサンサンとさしてきて、 ソファで(((´-ω-`)))ウトウト…と眠っていた愛が起きてきた。

 

おれ「おはようー」

 

愛「笑っていい◯もの増刊号も終わるような時間帯に起きちゃった」

おれ「その番組、とっくに番組自体が終わってるぞ」

愛「∑(*'д'*)ハッ!

 ねぼけてた」

 

 

愛「おなかすいたから昼ごはんつくってくる」

おれ「ずいぶん旺盛だな」

愛「主語を省略しなさんな」

おれ「主語?」

愛「『食欲』!!

 

愛「あ、あれ!?

 ( ゚д゚)アツマくんが西脇順三郎なんて読んでる!!

 

おれ「(;´Д`)な、『なんて』とはなんだ『なんて』とは!!

 (;´Д`)おれが詩集読んじゃマズいか?!

 

愛「ぜんぜん

 

 

西脇順三郎詩集 (岩波文庫 緑130-1)

西脇順三郎詩集 (岩波文庫 緑130-1)

 

 

愛「わたしが昨晩このテーブルに放(ほ)ったらかしにしてた本じゃないの」

おれ「珍しくないか? おまえはもっと本を大事にするイメージがあるぞ」

愛「カーペットに投げ捨ててたわけじゃないでしょお!?」

おれ「(^o^;)いやそんなことおれもしねぇよ」

愛「買った本でも汚損(おそん)しないのがわたしの信条だし、じじつ、その『岩波西脇(いわなみにしわき)』、表紙とか、カバーが汚れてるわけでもなんでもなかったでしょ」

おれ「たしかにそうだった」

 

おれ「(・_・  )まぁ、『買った本』っていっても、『親御さんからの読書用おこづかいで買った本』なんだけどな」

愛「(  >_<)余計なことばを長々と継ぎ足さないでよ!

 

おれ「(愛にポカポカポカ……と叩かれつつ)えてるにたすっておもしろいタイトルだな。この詩人の造語か?」

 

ポカポカポカ……の手を止めた愛「(眼を見張り)も、もうそこまで読んだの、アツマくん!?

 

おれ「ああ、読み飛ばさずに」

愛「(; ゚д゚)

 

ホットカーペットに正座した愛「ーーてっきりアツマくんはさいしょの『ambarvalia(あむばるわりあ)』で挫折するとおもっていましたごめんなさい

 

 語り始めやがった……、昼めし作るんじゃなかったのか。

 こうなるともうクッキングどころじゃなくなる。

 

愛「『ambarvalia』、『あむばるわりあ』、『旅人かへらず』、『近代の寓話』、『第三の神話』、『失われた時』、『豊穣の女神』、

『えてるにたす』の前にこれだけ作品あるのよ、たとえ抄録(しょうろく)とはいえ。

 ほんとに『豊穣の女神』まで午前中だけでたどり着いちゃったの!?」

 

おれ「『旅人かへらず』はしんどかったな。読んでいていちばん面白かったのは、『旅人かへらず』よりあとから、かなあ?

 『第三の神話』とか、さ」

愛「ほんとに320ページも読み進めちゃったんだ」

おれ「やれやれ、うたぐりぶかいなあー」

愛「アツマくん、もしかして、読むの速い?!」

おれ「ん?

 速読能力とか、そういうのじゃなくってさ……、集中力で、320ページも読めちゃった、ってことだと思うぞ」

愛「(;´Д)それ、『時間を忘れて読んでる』ってことだよ、まるで恍惚(こうこつ)……」

 

 そこまで言うか。

 

愛が自分の部屋から『現代詩文庫』シリーズの『西脇順三郎詩集』を持ってきた

 

 

 

愛「いちおう、持ってるってだけだけどね。

 実を言うとわたしは西脇の良さがわかんなくて

おれ「だろうと思った」

愛「(´・_・`)うん……」

 

おれ「(愛が持ってきた『現代詩文庫1016』をまじまじと見て)ふーん、西脇順三郎、こんなおじいちゃんだったんだ」

愛「とっくに死んでるわよ」

おれ「わかってるよ!」

 

愛「(ボソッと)西脇は晩年の詩集になればなるほどわからなくなる……」

おれ「『人類』とかか?」

愛「それが最後の詩集ね」

おれ「(今度は岩波文庫のほうに戻って)漢字二文字シリーズってところか、おまえが言う『晩年の詩集』は。

 ふーん。

 もちろんおれはこの岩波文庫を最後まで読んでないし、」

 

 

 

 

 

おれ「この西脇順三郎ってジイさんの『晩年』がどこからどこまでーー、ってのは、わかんないけどさ」

愛「だからもう死んでるから」

おれ「死んでるのはわかってるよ」

 

おれ「ともかく、おまえの意見とはぎゃくに、死に近づくにつれ、おれにとって『良い!!』『オモロい!!』っていう作品が増えていく気がするなあ」

愛「西脇順三郎の、最期の詩に向かうにつれて、西脇の最期の詩に向かっていってーー、ってこと?」

おれ「そう! 予感でしか無いけど」

 

愛「(;´∀)ふ、ふーん。

 めずらしい嗜好ねアツマくんは」

おれ「そうでもなくね?」

愛「わ、わたしの周りには『西脇いうほどでもない、西脇ショボい』っていう人間が多いので」

おれ「ふーん。おれ的には『そうでもなくね?』って言いたくなっちゃうけどな」

愛「(;´∀)で、でもあなた、今朝はじめて西脇読み始めたんでしょ」

おれ「だからかもしれん」

愛「(;´∀)……。

 西脇は、慶應の英文科の先生だったのよ

おれ「(^o^)ほぉ!

 おれ記念受験も勿体ないから、慶應に出願する気もハナっからないんだけどさ、

 慶應でないにしても、英文科がある文学部を狙おうかな」

愛「( ・_・)そういう文学部、多いよ」

おれ「なんとなくわかる」

 

 

 

 

そして。

 

そしておれは、

その日のうちに岩波文庫緑130-1『西脇順三郎詩集』を読了し、

英文学が勉強できる首都圏の大学を片っ端から調べ始めた。

 

 

2018年12月17日(月)

昼休憩の教室にて

 

 

 

藤村「珍しい。『オセロー』のほかにこんな本まで戸部のカバンから出てきた」

おれ「ああ。

 これは愛から譲ってもらった本なんだ」

 

藤村「(;´Д)ってことはーー」

おれ「所有権はおれにある」

藤村「マジかぁ……」

おれ「ああ。

 (裏の西脇順三郎の写真を藤村に見せて)

 ひょうきんそうなジイさんだろ?