きょうはもちろん学校の日……なんだが、『文芸部のバイト』という名目で、伊吹先生以下、わたしたち文芸部一行は、なぜか近所の児童文化センターに来ている。
わたし「なんか小学生がいっぱいいませんか、月曜の昼間なのに」
文芸部の香織センパイ「ああ、近くの小学校で学芸会みたいなのがあったらしく、きょうはその代休なんだって」
わたし「それでですか…」
ふーん、小中学生の自由研究や調査発表が貼られてるのね。
図書室
ふーん、ちゃんと靴を脱いであがるんだ。
わたし 「…って、伊吹先生!!
靴を脱いで入ってください」
伊吹先生「(。ノ_・`。)シュン」
わたし「(・へ・)メッ!!」
香織センパイ「たはは、さすがに机と椅子がちっちゃい」
わたし「子どもの目線に合わせて……じゃないといけませんからね」
伊吹先生が、『学習漫画 日本の歴史』 を大量に本棚から持ってきて、積ん読を崩している。
ーー先生って、ほんとうに現代文の教師なんだろうか…?!
香織センパイ「せんせえ!!」
伊吹先生「きょうびの集英社の学習まんがは進んでるねえ~」
香織センパイ「せんせえ💢」
わたし「(^_^;)」
伊吹先生「そうそう、読み聞かせ読み聞かせ」
香織センパイ「でしたよね、バイトの中身」
『ねーねー、おねえちゃ~ん』
わたし「ーーな、なにかな~? (^_^;)」
香織センパイ「羽田さん…」
伊吹先生「羽田さんが…」
センパイと先生『子どもになつかれてる』
小学校低学年の女のコが、わたしの胸の下あたりでじゃれている……(;´Д`)
『おねえちゃ~ん、これよんで~』
というわけで、某児童書をその娘に朗読してあげることに。
わたしが読み始めると、わたしの周りに、なぜだか知らないけど、女のコのおともだちらしき子どもが集まってきて……
うぅ(;; ´Д`)
児童文化センターの職員さん「あなた、読み聞かせ、すごく上手ね。」
「高1なの!?」
「どこかボランティアで読み聞かせをやってたとか?」
「生まれて初めて!?」
「…あしたから、ここで働かない?」
伊吹先生「そ、そそそそそれはダメですぅ!!(;´Д`)」
『おねえちゃん、
義経って、どうして死んじゃったの?』
あああ今度は4年生ぐらいの男の子からの質問攻め(-_-;)
「……(;・∀・)
きみ、『壇ノ浦の戦い』はわかる?」
『バカにしないでくれよぉー』
「(💢;・∀・)ピキッ」
『平氏が壇ノ浦でほろんだんでしょー、そのあとがよくわかんないんだよ~』
「( ー`дー´)わかった、覚悟して聞きなさいよ」
『∑(´゚Д゚`)ビクッ』
(そこらへんにあったホワイトボードに「検非違使」と書くわたし)
「この漢字四文字、なんて読むかわかるかな( ー`дー´)?」
『……けんぴいし(´・ω・`)』
「ざんねーん。『けびいし』。け・び・い・し、ね。
(『検非違使』の上にルビをふる)」
『けびいしは何するひとなの』
「平安京の安全を守るひとよ。
今で言う警視総監」
『!? 警視総監って、警視庁にいるんだろ、平安京って京都のことじゃん、京都のおまわりさんがなんで東京にいるんだよ(@_@;)』
「このころの日本の首都が京都だったからよ」
『そうなの? でも、頼朝は鎌倉幕府を作ったよね?(@_@;)』
「でも首都は京都のままなの。キミ、いつまで京都が日本の首都だったと思う?」
『……関ヶ原の戦い』
「の、260年以上あとまで、なんだなーこれが」
『(゚Д゚;)!?』
伊吹先生「ちょ、ちょっ、羽田さん、小学生の男の子相手にマウントとっちゃだめよ」
わたし「マウント?? なんですかそれ」
伊吹先生「あなた高校の社会の先生の眼になってるよ」
「今の東京が京都で、警視庁も京都にあったようなものだから、京都イコール平安京っていう都(みやこ)の安全を守る検非違使はこのころの警視総監」
『なっとくできないよ』
「そうね、わたしもはんぶんウソついてるから」
『ウソ!? ひきょうじゃん、ひきょうだよねえちゃん、それ』
「(人差し指を振って)義経がなんで死んだか、だったよね?」
『う、うん(@_@;)』
「結論から言うとね、義経は頼朝に殺されたの」
『それはわかるよ』
「じゃあ、なんで義経は頼朝に殺されなきゃならなかったのかなあ?」
『…きょ、きょうだいの仲が悪かったからだろ』
「ピンポーン。じゃあ、義経と頼朝のきょうだいは、なんで仲が悪かったのかなあ?」
『・・・・・・(だんまり)』
「後白河法皇って、知ってるかな?」
「院政って、なんのことだっけ?」
『天皇をやめた人が、続けて政治をすることだろ?』
「よくわかってるね!
義経が活躍していた時期も、院政は続いていた、だから、平氏がほろんだとき、京(きょう)の都(みやこ)の最大の実力者は、後白河法皇だったんだよ」
『そこらへんの関係がよくわかんないんだよ』
「頼朝は鎌倉にいたのよ、でも、義経は京都で後白河法皇と仲がいいの」
『さっきの、け・び・い・し、って、もしかして後白河法皇が義経をけ・び・い・し、にしたのか?』
「ピンポーン!!」
『それが、頼朝にはおもしろくなかったんだ』
「そうそう!! 検非違使(けびいし)に勝手になっちゃったの義経は、頼朝になんにも言わないで」
『兄貴になんにも言わずにエラい人になったら怒るよな』
「そうそう、まあそういうことね。しかも、平家を倒したとき、義経の活躍は、ちょっと目立ちすぎてたから」
『ひよどりごえのさかおとし、だっけ?』
「よく知ってるねえ! えらいえらい( ^∀^ )ニコニコ」
『あたまなでなくてもいいだろ~o(*`ω´*)o』
「ごめんごめんw
『一ノ谷の戦い』や『屋島の戦い』や『壇ノ浦の戦い』はわかるんだね」
『うん、ドラマで合戦を見たりしたり』
「義経のたたかいは、ああいうふうに派手だったでしょ?」
『それがうらやましくて、気に入らなかったんだ』
「だれが、気に入らなかったのかな?」
『頼朝と頼朝の家来!!』
「すごーい、よくわかったねえ!!」
「義経は、いろんなひとのあやつり人形だったの。後白河法皇もそのひとり」
「よく難しいことば知ってるねえ!!」
『カァ…(//ω//;)』
「で、梶原景時(かじわらのかげとき)って武将がいてーー」
伊吹先生「おねえさあ~ん」
わたし「あ、( ;゚д゚)アッ!」
伊吹先生「おなかすいた~」
『たしかに!』