【愛の◯◯】ハルくんの落としもの

 

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(↑ のつづき)

 

 

アカちゃん「じゃあ、ポニーテールにしてみようかな」

わたし「あ、それいい!!!」

 

アツマくん「(狂喜した顔で)ポニーテール!!!!!!!!

わたし「(頭をはたいて)いやらしい! 自重しなさいよ」

 

アカちゃん「(すてきな微笑を浮かべて)愛ちゃん、ヘアゴムある?」

わたし「ないわけないでしょ」

アカちゃん「じゃあ貸して♫」

わたし「貸さないわけないでしょーw」

 

 

 

 

しばらくのち、ポニーテールに結わえたアカちゃんが戻ってきた。

 

うん、似合ってる似合ってる。

 

それに引き換え、この戸部アツマって男は。

いやらしそうな眼でアカちゃんのポニテ姿を見て・・・

ひどい。

しつけなきゃ

 

アツマくん「そういえばさあ」

わたし「なに(-_-)」

アツマくん「藤村の後輩のハルくんが、おとといここに来たとき、落としものしちまった~って、連絡来てたじゃん」

わたし「( ゚д゚)ァッ! そうだった」

 

 

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↑このとき

 

アツマくん「今日あたり来るらしいよ、学校で藤村がそう言ってたから」

わたし「そっか。

 アカちゃん、『ハルくん』っていうおもしろい男の子が、たぶんもうすぐここに来るよ、落としもの取りに」

アカちゃん「おもしろいって、どんなふうに……(; ^ω^)」

 

ピンポーン

 

アツマくん「お、言ってるそばから」

 

 

 

ハルくん「すみませんでした・・・orz」

アツマくん「気にすんな! もっと堂々としないと、試合で戦えないぞw」

ハルくん「ほんとそうですね」

アツマくん「これから『ハル』って呼び捨てにするから」

ハルくん「あ、もちろんオッケーですよ」

 

わたし「アカちゃん、彼が、サッカー部で藤村さんの後輩のハルくん。

 わたしたちと同学年よ」

 

アカちゃん「ハルさん、初めまして、愛ちゃんと仲良くさせてもらってるアカ子と申します。どうぞよろしく。」

 

なぜか硬直するハルくん。 

アカちゃんを見た瞬間だった。

 

ということは、まさか・・・( ̄▽ ̄)

 

ハルくん「えーっと、えーっと、ふたりは、同じ学校ですか?」

アカちゃん「ええ、そうですよ」

ハルくん「ものすごい名門ですよね……」

アカちゃん「通ってると、そういうこと、ぎゃくに意識しないんですよww」

ハルくん「そこらへんが名門です

 

わたし「ハルくんもアカちゃんも、同学年なんだからタメグチで行こうよ」

ハルくん「そうだそうだ……。

 アカ子さん、と呼べばいいかな?」

アカちゃん「なんでもいいわよ

 

アツマくん「おい、肝心の落としものの件」

わたし・アカちゃん・そしてハルくん「あっ!!

 

 

Orange 第1巻 (少年チャンピオン・コミックス)

Orange 第1巻 (少年チャンピオン・コミックス)

 

 

アツマくん「ハル、たぶんハルがサッカー始めたのって、この漫画の影響なんだろ」

ハルくん「そうなんですよ!!! 

 単行本1巻の初版が、ぼくの生まれた年と同じ年なんです」

 

わたし「ってことは・・・2002年?」

ハルくん「そうだよ、日韓ワールドカップの年」

 

アカちゃん「えっ、わたしたちが生まれた年に、日本でワールドカップがあったの?

 初めて知った

 

とうぜん、わたしとハルくんとアツマくんは、過去に前例のないぐらい驚愕してしまって、しばらくだれもなにも言えなかった。

 

ハルくん「め、名門校特有の、ジョークだよね、今のは?」

アカちゃん「ジョークじゃないわ

わたし「い、いや、さすがに、お笑い芸人みたいにボケをかましたかと思ったよ…(^^;)」

 

 

Orange 第1巻 (少年チャンピオン・コミックス)

Orange 第1巻 (少年チャンピオン・コミックス)

 

 

アツマくん「でもすごいチョイスだよな。『キャプテン翼』じゃないんだもん。しかも、『翼』以外にも、『ORANGE(オレンジ)』以上に知名度があるサッカー漫画、いっぱいあるし。

 

 おれも題名知ってるだけだわ。

 不遇だよなあ、作品も、作者も

 

わたし「てっきりサッカーゲームのデータが入ったメモリーカード落としたかと思ったよw」

アツマくん「おれもw」

ハルくん「大切な漫画本なので、忘れてきたってことに気づいたときは、泣きました・・・」

アツマくん「わかるわかる」

 

わたし「『漫画』ってすごいね。ひとの人生に影響を与えて、そういう大事な作品の単行本をなくしただけで、泣かせちゃうんだもん

アツマくん「おまえにしては名言じゃないか」

わたし「『おまえにしては』ですって!? わたしのことなんだと思ってんの、バカバカ」

アツマくん「おれの大切な人!

わたし「・・・・・・

 

こんどは・・・・・・わたしが硬直してしまった。

 

アツマくんの言葉は、全盛期の藤川球児の、火の玉ストレートみたい。

 

ほら、ハルくんとアカちゃんも赤面してるし。

 

ハルくん「じゃあきょうはもう帰ります」

アツマくん「あれ? きょうの夜、さいたまスタジアムウルグアイ戦だったよな? 日本代表の」

わたし「そうそう、テレ朝で中継するって、新聞にも書いてあったよ。

 一緒に観戦しよ?」

 

アカちゃん「遅くなるから帰ります」

わたし「えっ、もう少しいいじゃん」

アカちゃん「ハルくん、わたしはジョークを言ったつもりは全然ないから。

 それは覚えてて。

 

 それじゃごきげんよう

 

赤星憲広の全盛期のような走力で、アカちゃんは邸(やしき)から出て行ってしまった。 

 

ハルくん「しょ、初対面で、名門女子校のお嬢様を怒らせちゃった・・・(;゚Д゚)

わたし「大丈夫だよ、『消される』とか、そういうのはないから安心安心。

 たぶん

ハルくん「たぶん、ってなんだよ、怖い・・・(;゚Д゚)」

 

アツマくん「とりあえずおちけつ、ハル。

 ハル、おまえ、好きなサッカー選手とか、いないのか?」

ハルくん「ぼくは・・・試合観るより、試合で走り回ってるほうが、好きですから

わたし「へーっ、かっこいい! そう言い切れるの、かっこいいと思うよ!」

アツマくん「でも、珍しいよな。憧れの選手もいないし、テレビの試合中継もあまり観ないんだろ?」

 

ハルくん「そりゃ、チームメイトには、サッカーマニア、たくさんいますよ。毎日プレミアリーグの話ばかりロッカーでしてる先輩とか、FC東京の年度別得失点差をぜんぶ暗記してるJリーグマニアとか」

アツマくん「Jリーグマニアじゃなくて、FC東京マニアって言ったほうがいいと思うぞ、そいつは(; ^ω^)」

わたし「そっか、FC東京か。味の素スタジアム、近いものね」

ハルくん「味の素スタジアム、知ってるんだ」

わたし「あら、こう見えてもわたし、スポーツ観るのもやるのも大好きなのよ」

アツマくん「横浜は4位~

わたし「最下位になって暗黒再来で監督がソッコーで辞める阪神よりはマシよ!!

アツマくん「いや、球団名は出してやるなよ」

 

ハルくん「ほんとに詳しいんだね! サッカーでなく野球も」

わたし「いちばん得意なスポーツは水泳だけどね」

アツマくん「そういえば水泳っていったら、おれと池江璃花子(りかこ)って同学年だな」

わたし「どうしてここまで差がついたんだろうねw」

アツマくん「なんだとーっ

 

ハルくん「アハハハ、仲の良いカップって、いいですね」

 

恥ずかしさ(とうれしさ)で、わたしとアツマくんの頭は瞬時に沸点に達し、湯気が出るほどデレてしまったのでした。