【愛の◯◯】アカ子の◯◯

嫉妬というのは怖いものだ。

 

わたしは、中等部のとき、愛ちゃんのなににいちばん嫉妬していたのか。

 

ひょっとしたら、愛ちゃんの話しぶりが、わたしと似ているようで、わたしよりずっと洗練されていた──そんなことが、最大の嫉妬の対象だったかもしれない。

 

愛ちゃんもわたしも、「〜だわ」「~わよ!」「~よ。」みたいに、現代の女子中高生が使わないような──それこそ、古めかしい翻訳小説のような語尾を使う。

 

でも、それでいて、愛ちゃんのほうが、話し方として、ずっと自然だし、いまは嫉妬こそしてないけど、自分の日常での話し方が、ときおりイヤになったりしてしまう。

わざとらしいから。

 

……なので、電話で、あえてふだんのわたしの話し方を、封印してみることにした。

 

語尾。

 

♪TEL♪

 

愛「もしもし」

アカ子「夜遅くごめん」

愛「どうしたのよw」

アカ子「あさってコンテストだね!」

愛「そ、そうね(((^^;)」

アカ子「ファイトだよ!」

愛「すごいテンションね。コーヒーでも飲んだ?」

アカ子「飲んでない。」

愛「あ、そう……(((^^;)」

 

アカ子「えーっとここから本当の要件。当日コンテストの前に衣装着るんだよね?   かなり手の込んだドレスだって聞いたから、わたし手伝っていいよね?」

愛「も、もちろんよ(^_^;)」

アカ子「衣装合わせ、もうしたらしいじゃん

愛「え、ええ、葉山先輩とサイズがほとんど同じで助かったって衣装担当の人が。

    そそそそれはいいとして──」

アカ子「何かな?」

 

愛「……イメチェン?」

アカ子「ち、違う!」