・戸部邸
・浴場
浴場に入る愛。
洗面器で、肩からお湯を浴びる。
とうぜん、湯船に入る前に、身体を念入りに洗う。
♪ボチャ♪
湯船にカポーンと浸かる愛。
大きく息を吐く。
「ふわぁ〜」
・・・・・・・・・・・・・
・リビング
風呂上がり愛「ねぇ」
アツマ「びっくりしたー、愛かよ」
風呂上がり愛「いちいちびっくりしないで」
アツマ「今日はパジャマじゃないんだな
(;・∀・)」
風呂上がり愛「(赤くなり目を伏せて)あんまり見ないでよっ!」
アツマ「わかった、わかったから、落ち着こう?」
風呂上がり愛「・・・・・・」
風呂上がり愛「・・・・・・ピアノ弾きたいんだけど」
アツマ「きょうもか? ここんところ多いな」
風呂上がり愛「まだ言ってなかったっけ」
アツマ「なにを」
風呂上がり愛「今週末にピアノコンテストがあるの」
アツマ「ファッ!? どこで」
風呂上がり愛「わたしの学校で」
アツマ「急じゃないか。文化祭の季節でもないのに」
風呂上がり愛「そうね・・・・・・
ゲリラ的なものよ」
アツマ「ゲリラ的、ねえ・・・・・・。
そういうのには何となくおまえは出ないものだと思ってたよ」
風呂上がり愛「これまでのわたしだったら出なかったでしょうね」
アツマ「じゃあどうして」
風呂上がり愛「優勝商品がね」
アツマ「優勝商品が?」
風呂上がり愛「ヨーロッパ旅行なの」
ソファーから転げ落ちるアツマ。
アツマ「どういう世界なんだおまえの女子校は!? 名門とはいえ」
愛「有名企業の一族の絡みとか・・・いろいろあるのよ」
アツマ「ひえぇ・・・:(;゙゚'ω゚'):」
愛「でね、ヨーロッパ旅行の経由地でね・・・・・・わたしのおとうさんと会えそうなの」
アツマ「おまえのお父さんは、仕事で世界中を飛び回っているんだったな」
愛「そう、だけど、今度はうまく日にちが合えば、おとうさんに会えるかもしれなくて。
利比古(としひこ)にだって会えるかもしれない」
うっとりとした眼をする愛・・・
アツマ「ほんとうにおまえは弟を溺愛してるんだな・・・」
愛「あたりまえでしょォ!? 家族なのよ!?」
アツマ「弟がいるならお母さんもセットでついてくるんじゃないのか」
愛「あ」
アツマ「『あ』じゃねえだろ!?
(;´Д`)」
アツマ「おまえの反抗期はまだ終わっていなかったのか」
愛「おかあさんのことべつに嫌いじゃないもん」
アツマ「お母さんの扱いがオトコの家族と比べてひどくないか(;´Д`)」
・グランドピアノにて
ピアノは……、
ピアノは、おかあさんが教えてくれた。
わたし。
なんのために、
だれのために、
ピアノを弾くんだろう。
3年の葉山先輩。
負けるとしたら……葉山先輩にだけ、
じゃなくて、
負けるとしたら……葉山先輩がいい。