8月17日 買う本が決められなかった

・夏期講習に行くために、自分の部屋から降りてくるアツマ。

 

すると……

 

 

アツマ「なんだ、愛、おまえも出かけんのか」

愛「アツマくんと一緒の電車乗る

アツマ「どーして」

愛「書店に用があるの、アツマくんが通ってる予備校の近くの書店、そこで本買いたいの」

 

◯行きの車内

 

愛「……」

アツマ「……」

 

◯アツマが降りる駅

 

ふたりは改札を出た。

 

アツマ「それじゃあな。予備校はこっちだから。また帰りに」

愛「うん、書店はこっちの方角だから」

 

アツマ「(頭をポリポリ掻きながら)あのさ……」

愛「な、なに……」

アツマ「いいな、その服

 

 

ーーそう言ってアツマは予備校に行ってしまった。

立ちすくむ愛。

 

 

◯愛の目的の書店

 

愛(えーと、人文書フロアに行くエスカレーターは……ここか)

 

ウイーンウイーンとエスカレーターに運ばれる愛、

であったがーー

 

いいな、その服

 

ぶるんぶるん! とあたまを振る愛……。

にわかに客の注目を浴びる。

 

愛「い、いけないいけないいけない

 

どうして?

 

ほめられたなら、うれしいはず。

 

すなおにうれしいとおもえない。

 

でも、こう、あったかいかんじょうというかなんというか

 

・人文書フロア

 

わたしとしたことが……。

 

興味を持っていた本が、思ったより高かった。

 

わたしが今はいてるスカートよりは安いけど。

 

前もって価格を調べてこなかったわたしが悪い。

 

普段は、見立てより少し値段が高いぐらいなら買ってしまうんだけど、

これはなぁ……。

 

わたしは別の棚に行って、目当てのものより価格が安い本を探そうとした。

 

でも、レジに持っていこうとする決断がなかなかできない。

 

目当ての本より値段が安いにしても、「目当ての本ではない」という事実に変わりはない。

その事実が、レジに持っていこうとする決断力をにぶらせている。

 

わたしはそのフロアのすべての棚を物色した。 

 

しかし、当然のことだけど、目当ての本の代わりになるような、目当ての本より安い本は、決めきれなかった。

 

 

腕時計を見ると、正午が迫っている!

 

アツマくんと一緒にお昼を食べるという発想が……

なかった。

 

「おひとりさま」とは本当つらいもので、わたしがひとりでは入りづらいお店が多く、お昼を食べるお店を見つけるのに、だいぶ苦労した。

 

アツマくんのせいじゃない。

段取りを省いた、わたしの過失。

わたしのバカバカ。

 

◯某サブウ○イ

 

愛「( ´Д`)=3」

 

愛(これから、どうしよう)

 

愛(文庫本がそろっている書店は……、少し歩くけど、あそこかな)

 

 

東京都心のいいところ。

 

・品揃えがきちんとしてる書店がある

・古本屋が多い

・上野に国際子ども図書館がある

・上野公園の居心地がいい

神楽坂駅から神保町あたりまでの界隈をぶらぶら歩くのが楽しい

(ただし、夏以外)

・美術館がいっぱいある

・博物館もいっぱいある

・動物園もある

・水族館もある

 

水族館か……。

アツマくんと水族館に行ってから、もう1ヶ月近くになるんだ。

 

いいな、その服

 

愛「あーっ、もう!!!!!! ヽ(`Д´)ノ

出てくるな、アツマ!!!!!!

 

(道行く人が愛に注目する)

 

愛「あ、どうも、すみません(-_-;)」

 

 

◯某大型書店

文庫と新書のフロアに来た。

 

おびただしい量の岩波文庫が敷き詰められている棚の前に立った。

立ったのだが。 

 

あれ?

 

わたしの知的好奇心が落ちているのか、「手応え」がない。

 

新刊や復刊の岩波文庫を棚から手に取っては戻す……を繰り返している。

まるで文庫本がわたしの手からすり抜けていくみたい。

 

かといって、この棚、読んだのだらけ……。 

 

わたしは、海外文学含め純文学を多く取り扱っている文庫レーベルの棚と学術系文庫レーベルの棚をしらみつぶしにした。

 

でも、発見がなかった

 

 

 

フロアを行ったり来たりしたせいで、軽いめまいがしたので、たまらず書店に入居している喫茶店に駆け込んだ。

 

「えーっと、ミックスジュース」

 

喉が渇いていたのでミックスジュースを一気に飲んでしまった。

 

お冷やをコップの半分まで飲んで、本日のコーヒーを追加注文した。

 

まずい、今月の『読書用おこづかい』を侵食している。 

 

カバンのなかに、3冊の本をあらかじめ入れてきた。

 

1冊目を読もうとした。

眼が文字を素通りしていって、うまく読めない。

 

2冊目を読もうとした。

眼が文字を素通りしていって、うまく読めない。

 

3冊目を読もうとした。

眼が文字を素通りしていって、うまく読めない。

 

・・・・・・

 

「いけない(;´д)、アツマくんからメール来てる、予備校もう終わったんだ」

 

『地図送るから、この書店まで来て』

『エーッ、遠くね?』

『💢💢💢』

『わかったよ』

 

(この喫茶店の窓から、横断歩道渡ってアツマくんがやって来るのが見えるはず)

 

ーー15分経過ーー

 

「あっ、あれ多分アツマくんだ。

となりに誰かいる。

 

 

 

 

 

!?」<ガタッ

 

茶店の店員さん「あ、あの、お客さま、どうされました?(^_^;)」

 

「アツマくんが……アツマくんが……、

 

 女の人と腕組んでる……

 

店員さん「アツマくんって、どなたですか?(^_^;)」