ボタンの掛け違え

愛「アツマくん、箸の持ち方が直らないね」

アツマ「ガキのころに矯正できなかったからな・・・もうあきらめてるよ」

愛「まだなんとかなると思うよ。社会人になったとき、意外とそういうところを見られるんじゃないかな。わたしはもちろん社会人じゃないから、そう思う、ってだけだけど」

明日美子さん(深くうなずく)

愛「や、やっぱり、そういうものですよね? (^_^;)」

アツマ「うう・・・」

 

愛「いい? 正しい箸の持ち方って、こうだよ」

アツマ「こう、か?」

愛「そうそう、その調子」

アツマ「こう、だな?」

愛「そうそう、やればできる」

 

 

遠目で妹は観ていた

 

さいきん、お姉さんとお兄ちゃんが仲睦まじい。

 

お姉さんが、お兄ちゃんを『アツマくん』と呼ぶようになってから。

 

それに、お姉さん、以前より、お兄ちゃんに対する『当たり方』が、柔らかくなってると思う。気のせいじゃない。

 

前は、お兄ちゃんに対して、もっと厳しかった。

 

そんなお姉さんが、好きだったのに・・・

 

「あすかちゃん?」

 

あすか「ほ、ほぇあ!

愛「なんか悩み事でもあるの? 考え事してるみたいだったけど。もしかして高校受験のこととかーー」

アツマ「入試は来年だからー、とか思ってたらあっという間に来るぞー。愛に勉強教えてもらえ〜」

あすか「で、でも、お兄ちゃんだってそうじゃん。大学受験

アツマ「お(-_-;)」

 

愛「さすがに大学受験はカリキュラムの問題でわたしが追い付けないところがあるかな〜」

アツマ「いくら名門女子校といっても、全単元が終わるのは高2の年度末らしいからな」

あすか「それって、お兄ちゃんが自分で頑張らないとイケないってことだよ!💢」

アツマ「う(-_-;)」

あすか「お姉さんに頼ってばかりじゃダメってこと自覚しなよ、自己責任だよ」

アツマ「きょうは攻めるな(-_-;)」

あすか「箸の持ち方教えてもらってる場合じゃないよ。

 

愛「😨ガーン」

 

あすか「(焦って)あ、あの、これは、お姉さんが箸の持ち方教えるのが悪いんじゃなく、バカ兄貴の日頃の行いが・・・」

アツマ「なんだと!? プンスカプンスカ💢」

あすか「だってそうじゃん!! お兄ちゃん、やりたいことばっかりやって、やらなきゃいけないこと後回しにしてるじゃん!! バカ!!!

アツマ「バカって言ったやつがバカなんだぞ!!

愛「やめて!!!

 

兄妹「・・・・・・」

愛「きょうだいは仲良くするものでしょ!? 言い争わないで!!

兄妹(シーン・・・)

 

あすか「あ、あの、おねえさん、ごめんなさい」

愛「なんであすかちゃんが謝るの?

あすか「えっ・・・」

愛「とにかく仲直りして。仲直りするまで誰にも勉強教えない」

(階段を駆け上がる音)

 

その翌日の夕方

 

なんか、お姉さんともギクシャクしちゃったな・・・。

 

朝ごはんのときも、目を合わせづらかったし。

 

やっぱ、わたしの不用意なひとことが、いけなかったんだろうか。

 

お兄ちゃんとふたりで、謝ろう・・・。

 

○リビング

 

あすかは、兄の帰宅を待っている。

 

お兄ちゃん、遅いよ。帰宅部のくせして。

 

はやくお姉さんとの“より”を戻したいのに・・・!

 

そこに・・・

 

『ただいまかえりましたー』

 

お、お姉さんが帰ってきちゃった!

 

愛「あすかちゃん、ただいま」

あすか「お、おかえりなさいませ(^_^;)」

 

しばらく、ふたりとも沈黙。

 

あすか「あっあの」

愛「昨日はごめん、あすかちゃん!

あすか(えっ?)

 

「あんなに怒鳴ったりして、ビックリさせちゃって」

 

なんで?

 

わたしたち兄妹が仲直りしなきゃいけないって、昨日お姉さんは・・・言ったはず。

 

そうしないと、高校受験の勉強も教えてあげないって、お姉さん、きのう・・・!!

 

愛「あのね、あすかちゃん、勉強ならいつでもーー」

 

あすか「ほっといてください!!

 

あすか「(マズイことをしてしまったという焦り顔で)あっ・・・」

愛「あ、あすかちゃん、昨日はわたしが言い過ぎて、」

 

あすか「と、とにかく、きょうだいのことはきょうだいで解決しますからっ(震えながら)」

愛「あすかちゃん・・・、もしかして、怒ってる?」

あすか(!)

 

慌ててカバンを持って自分の部屋へ駆け出すあすか。

 

愛「あ、あすかちゃん!? (゜o゜;

待って、もう少しはなしを聞いて!?」

 

 

部屋に入るなり、ベッドに倒れ込むあすか。

 

どうしよう!?

 

お姉さんと、顔を合わせられなくなっちゃった!!