鳴らない、打鐘(後編)

 

bakhtin19880823.hatenadiary.jp

 

某デパート屋上。

 

姉ちゃんに、買い物頼まれたから、来たと思ったら、御神本(みかもと)が目の前にいたんだもんなあ。

スイミングの自主練? 自主練ならとっとと更衣室に行けばいいだろ。

なんだよ、「ちょっと話したいことがある」って。

どうせ戸崎の”さしがね”で、ロックバンドがどうたらこうたら~とか言うんだろ。

 

「ジュース代ぐらいおごるぞ」ってせっかく言ってやったのに、「ここはワリカンで」だと? ふざけるな! 

 

「ねえ」

「なんだよ(-_-;)」

「真島は、さ」

「なに」

「競輪選手とかにはならないの」

「は!? 話ってそれかよ(;´Д`)」

 

御神本は、いつものように、コケにしたような顔で、おれのほうを向いている、ように……見えた。 

 

「ならないよ」

「どうして」

「大学行く」

「自転車部?」

「そう」

「大学出たら? 実業団で続けるの」

「大学出たら、競技はやめる」

「え!?」

 

ほら、予想通りの反応。ぽかーんと口を開けて驚いてる。

こんな話を家族以外にするのは、こいつが初めてだ。

よりによって、話す対象が御神本になるなんて……(-_-;)

 

「あんた、将来の夢、現実的すぎない?」

「どこが?」

 

「おれはな、御神本」

「なによ」

ロードバイクで日本一周したいんだ

「え、え、え、えっ……   なにそれwww」

笑うな!!(#゚Д゚)

「わ、わ、笑っちゃうに、き、決まってるでしょwwwww

 なに、その、ロマンティストみたいな夢wwwwww」

 

腹抱えて笑ってやがる。 

 

「じゃあ御神本の夢は?」

「……」

「オリンピックに出ることか? ハードルは高すぎるくらい高い気がするがな」

「……」

 

急に真顔になって、落ちる夕陽を見つめてやがる。

 

……こっち、向けよ。 

 

「わたしまだ16歳だし」

「……決まってないのか、将来の目標とか」

「だってまだ16歳だし」

「おれは決まってるぞ!!」

「ウザっ」

「世界はおまえらが思ってるより広いんだよぉ!!

 広い世界を、ロードバイク一本で旅してみたいんだ」

「いや、世界じゃなくて日本でしょ」

「うぜぇ」

 

 

猛烈に、つづく