加藤周一 読書術 神様、もう少しだけ

本屋の棚に面白そうな本たくさんあって迷うじゃんよ。書評を読むとどれも読みたくなるじゃんよ。速読法に手を染めたくなるじゃんよ。でも「急がば回れ」ってことわざ、きみが知らないわけはないじゃんよ。

戦後の映画で「ヌーヴェル・ヴァーグ」ってあったじゃんよ。『恋人たち』って映画があるんよ。その映画の中で女がクルマを運転してるけど故障するんよ。偶然通りかかった若い男が女のクルマの面倒を見るんよ。女は急いでるから自分のクルマを捨てて男のクルマに乗せてもらうんよ。でも男はクルマをノロノロ運転するんよ。女が急かすと男はこう言うんよ。

「原則として、わたしはゆっくり進む」ーーカーッ、これ以上かっこいいセリフはないね。

アランがこう言っているよ。「繰り返し読むことのできんような小説ならば、読む価値なし」

俺はおそく読む「精読術」の話をしてるんよ。

おそく読むべき本は、古典じゃんよ。

これに加えて日本の古典文学だね。いずれも東洋と西洋の思想を形作った本だよ。

 

「先生、どうも『論語』は馴染めないんです」

「なら聖書やプラトンを読めばいいじゃないか」

 

僕は今 新約聖書を読んでいる(文語訳) 『ブッダのことば』も『論語』もプラトンの数冊も本棚にある 

 

参考文献 加藤周一『読書術』 岩波現代文庫、2000 「Ⅱ-3 おそく読む『精読術』」